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『デザインのひきだし』津田編集長と紐解く、知られざる「顔料箔」の魅力【前編】

2025年11月、京都の堀川新文化ビルヂング「NEUTRAL」にて開催された「『デザインのひきだし』のひきだし展」。その特別トークイベント(11月15日開催)にて、KANMAKIの久保昇平がゲスト出演し、津田淳子編集長との対談を行いました。

昨秋のイベント実施後、グラフィック社からのご退社や水鈴社への移籍という大きな節目を経られた津田編集長。紆余曲折を経て、新天地となる水鈴社にて無事に最新号『デザインのひきだし 57』が刊行・発売されました。

『デザインのひきだし57』刊行のプレスリリースはこちら

はじめに

この新刊発表・無事刊行を記念し、津田さんご本人の快諾のもと、当時行われた熱い対談の文字起こし記事をあらためて公開いたします。

グラフィック社時代から変わらぬ「紙と印刷・加工への情熱」、そして新装刊を経てもなお受け継がれる『デザインのひきだし』のスピリットと「顔料箔」の奥深い魅力を、前編・後編の2回に分けてじっくりとお届けします。

前編では、顔料箔とは何かという基本的な解説から、アルミ蒸着箔とは一線を画すその独特の表現力、そして津田編集長が顔料箔に魅了される理由についてご紹介します。

トーク

久保: 自己紹介させていただきます 。京都の大原というところで、1952年創業の関西巻取箔株式会社という会社をやっています。社名が長いので「KANMAKI」と呼んでいただいてます。皆さんにもよく知られている「箔押し」という加工に使われる「顔料箔」をつくっています。

箔押しでイメージされるものとしては、キラキラ光ってるゴールドやシルバーの「アルミ蒸着箔」と言われるものが一番メジャーです。最近だとトレーディングカードなどにも使われるホログラム箔も同じです。

それとは別に、もう1つ、私たちが「顔料箔」というジャンルがあります。会場の皆さんで「知っているよ」という方はどれくらいいらっしゃいますか?

(手を挙げた方は津田編集長と会場のお一人)


久保: ありがとうございます。説明しがいがありますね(笑)

こちらの『デザインのひきだし 51号』の表紙に使われたのが顔料箔です。ゴールドとパールホワイトの2色で、デザインのすべてをKANMAKIの箔で表現していただきました。

『デザインのひきだし』津田編集長と紐解く、知られざる「顔料箔」の魅力【前編】

皆さんが普段目にされているチョコレートのパッケージとか、雑誌の表紙とかで使われている金色のアルミ蒸着箔と、この51号の表紙で使われたゴールドを見比べていただくと、「全然違うね」とお気づきになると思うんです。

アルミ蒸着箔は、名前の通りアルミを使っていて、黄色の染料を透かしてシルバーをゴールドに見せるという方法を取っています。なので、アルミ蒸着の箔を見ると、表面はゴールドでも、裏を見ると白っぽいシルバーになっているんですね。

一方で、顔料箔は、いわゆる金属顔料を使っています。この表紙の金色の顔料箔は真鍮のゴールドインクを使っています。

津田: 真鍮の粉が入っているんですか?

久保: そうです。真鍮や銅の粉を樹脂と溶剤を混ぜたインキを、それを塗ってコーティングした箔を作っています。

弊社では黒や白、さまざまな色の顔料箔を作っていまして、某有名化粧品ブランドさんや某自動車メーカーさんのコーポレートカラーを特色として作った顔料箔を提供しています。

顔料箔が使われている分かりやすいところでは本の表紙とかですね。それ以外にも、自動車のエンブレムやスピードメーター、テールランプ。化粧品のパッケージや家電ブランドのロゴ。コロナワクチンの注射器の目盛りの表現にも使われました。紙だけじゃなくて、木とか革なんかにもいろんなところに使われています。

顔料箔は、身の回りにあふれているんだけど、あまり知られていない箔。僕らは“第三の箔”と呼んでいます。

津田: 第三ですか、それはどうして?

久保: 一つ目は伝統工芸の金箔。多くの方が、箔と聞いて一番にイメージします。二つ目は先ほどお話したアルミ蒸着箔。日常生活でも皆さんがよく目にしているものです。そして、まだあまり知られていないので、「第三の箔=顔料箔」と思っています。

『デザインのひきだし』津田編集長と紐解く、知られざる「顔料箔」の魅力【前編】

津田: 私はけっこう顔料箔が好きで、使う方です。特に白と黒を押す時は、顔料箔で押すことが多いですね。
今の会社に入る前の出版社にいたときですが、黄色い紙に黄色い顔料箔を箔を押したんですよ。そうしたら、 大理石みたいなムラが出て。「なんだこれは!」と思ったんですけれど、「逆に面白いからこれがいいね」と、そのまま採用した思い出があります。

「そもそも、顔料を印刷ではなく、なんでわざわざ箔押しで使うの?」と思われるかもしれませんよね。でもやっぱり、その独特な”物質感”が理由です。箔押しでは金属のハンコのようなものを使って、熱と圧力をかけてギュッて押すわけですが、そうすると、インキとは違う表現ができるんです。平滑なのにちょっとだけ沈んでへこんでいるという”物質感”が全然違いますね。

もう一つの理由は、箔押しをするとよく見えるんですよね。例えば黒い紙に黒い箔を押したりすると、同じ黒なのに性質が違うから、すごくよく見える。濃い色の紙にタイトルを押したい時にも、顔料箔のピンクなどで押してもらうこともあります。もちろんスクリーン印刷もありますが、やっぱり私は顔料箔が好きですね。

久保: 箔押し全般に言えるんですが、顔料箔の面白いところは、パッと見た時に浮かび上がって見えるのに、実際触ってみると、その箔の部分って凹んでいるんです。

某有名化粧品ブランドさんのロゴに白の顔料箔をご採用いただいていますが、真っ黒な上に真っ白なものを表現するときに、ベースの黒に負けちゃいけない白を作る必要があるので、一見シンプルなんですが、一番難しい仕事なんです。

それに白の箔と言っても、KANMAKIには20種類以上の白があるんです。真っ黒な上に白を際立たせることもあれば、逆に、「背面から光を当てるので、透過する白を作ってください」という要望もあります。

津田: なるほど。プラスチックとか透明なものに使う時ですね。

久保: そうですね。パッと見は白だけど、光を透過させてほしいという要望で、自動車のスピードメーターなどがそうですね。最近の電気自動車に多いですが、エンブレムやランプの場合、昼間は白に見えるけれど、夜になるとバックライトで透けて見えるようにしています。

『デザインのひきだし』津田編集長と紐解く、知られざる「顔料箔」の魅力【前編】

久保: 今はこんなふうに説明していますが、13年前にこの会社に入ったときは、皆さんと同じように顔料箔って何か分からない状態だったんです。その時、今日のご縁にもつながっていくのですが、実はこれ…

津田: 『デザインのひきだし』の6号! 最新刊が56号なので50号前ですね。

久保: これが2008年の発売。僕が会社に入った時にこれを見つけて、バイブルのようにずっと読んでいたんです。箔押しとか顔料箔って何なのか、箔の仕組みがどうなっているのかというのを、この本で勉強していました。

(後編に続く)

津田淳子 編集長

note :https://note.com/design_hikidashi
X      :@tsudajunko