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黒箔の種類・特徴を解説!活版印刷の違いとは

黒箔はインクでの表現とは一線を画す深い黒色を可能にし、製品に高級感と神秘性を与える箔です。艶やマット感、光の吸収率を調整することでブランドが求める唯一無二の「黒」を具現化します。
黒は製品の品質やブランドイメージを象徴する上で極めて重要な色です。表現や使い方を工夫すればデザインをぐっと引き締めてくれます。
【黒箔の特徴】
・艶、マット、深い黒など一色で多様な表現ができる
・箔押しならではの凹凸による存在感
・さまざまな素材に転写可能
・擦れや熱に強く、品質を長期間維持できる
本記事では、黒箔の定義・種類から活版印刷とのちがい、具体的な活用事例までプロの視点で徹底解説いたします。KANMAKIが注力する黒箔の奥深い魅力に触れ、貴社の製品のブランド価値を飛躍的に高めるヒントを見つけてください。
黒箔とは?構造と多様な表現力
黒箔は製法と機能によって大きく以下の3種類に分類されますが、一般的に製品の加飾で広く用いられるのは熱と圧力を用いる転写箔です。インクのように液体として浸透するのではなく、多層構造を持つ「膜」として機能することが特徴です。
【転写箔の多層構造】
1.PETフィルム層:製造時の土台となるフィルム
2.顔料層:黒色を発色させる顔料を高密度で含む層。この層の顔料の配合により、黒の濃淡やマット/ツヤの質感が決まる
3.接着層:転写する素材(紙やプラスチック)に熱で溶けて強固に密着させる層
メタリック箔・顔料箔・伝統箔の特徴
| 種類 | 特徴・製法 | 主な用途 |
| メタリック黒箔(転写箔/蒸着箔) | PETフィルム上にアルミを真空蒸着後、黒色クリアコートを施す。金属箔特有の、鏡のような強い光沢を持つ黒色を表現。 | 製品ロゴ、パッケージ、ラベルなど、シャープでギラリとした光沢感が必要な装飾。 |
| 顔料黒箔(転写箔/ピグメント箔) | カーボンブラックなどの顔料層を熱で転写。光沢のある艶黒からマットな黒、遮蔽用(光漏れ防止)といった機能性を持たせることが可能。 | 高い耐久性(耐熱・耐摩耗)が必要な自動車部品・家電製品、多様な質感表現を求める高級パッケージ。 |
| 日本画などで使われる伝統的な黒箔(打ち箔) | 伝統技法で打ち延ばされた銀箔などに、硫黄や染料で着色・加工。転写箔とは異なり、接着剤や膠(にかわ)で手作業により貼り付け。 | 日本画、仏具、漆器などの美術工芸品や内装装飾。繊細で奥深い和の質感。 |
顔料黒箔とメタリック黒箔が広く用いられる
現代の製品加飾において一般的に使用されるのは、大量生産に適し耐久性も備えた顔料黒箔とメタリック黒箔です。
ブランドの個性や機能性(耐久性・隠蔽性)を求めるニーズの高まりから、質感や耐久性を自在に調整でき、完璧な隠蔽性を持つ顔料黒箔が、工業製品や高級パッケージ分野で特に重要性を増しています。KANMAKIが注力しているのもこの顔料箔です。
顔料黒箔の種類
顔料黒箔は艶のある黒、マットな黒、深い黒、淡い黒など黒一色でもさまざまな表現が可能です。黒箔の種類をご紹介します。
| 種類 | 特徴的な質感と表現 | 用途例 |
| 光沢黒箔(艶黒) | 鏡面のような強い光沢を持つ。均一な漆黒の艶。 | 高級化粧品パッケージ、ブランドロゴ、書籍カバー。 |
| マット黒箔(艶消し) | 光沢を極限まで抑えた、落ち着いた重厚感のある黒。 | アート性の高い名刺、モダンデザインのパッケージ、テクスチャを強調したい紙。 |
| ディープブラック | 隠蔽性が非常に高く、下地の色を完全にシャットアウトする「究極の深み」。 | 自動車部品など高い隠蔽性が求められる製品の加飾。 |
| グレー系・淡い黒 | 灰色に近いトーンや、半透明に近い表現も顔料の調合で実現。 | 繊細なグラフィックデザイン、テクスチャとの調和。 |
| 特殊効果の黒箔(顔料箔以外) | 表面にパターンを施した黒のホログラム箔やパール箔、金属光沢をもつメタリック箔など意匠性の高い表現。 | セキュリティ対策、限定版製品の装飾。 |
メリット:隠蔽性と表現の幅
一般的に広く用いられる顔料黒箔がもつメリットをご紹介します。
・完璧な隠蔽性
黒箔は色材の層がインクよりも厚く、下地の素材色を透かさないため、濃い色の紙やプラスチック上などでも理想の黒色を発色させることができます。
・質感のコントロール
同じ黒色でも、光沢の度合いを細かく調整できブランドイメージに最適な「艶」または「マット感」を実現できます。
・高い耐久性
KANMAKIの黒箔は顔料箔であり、耐光性や耐摩耗性に優れています。特に自動車部品など、高い耐久性が求められる分野でも対応でき長期的な品質保持に貢献します。
デメリット:加工と表現の制約
黒色転写箔の採用時にはいくつかの注意事項があります。
・表現の制約
箔押しでは熱と圧力を用いるため、細かすぎる線や点の再現には制約が出ることがあります。微細なデザインを検討する際は、事前に再現性を確認することが不可欠です。
・コストに関する留意点
一般的な印刷インクに比べ、箔は特殊な材料であり製造や加工コストが高い傾向にあります。特注の黒箔を製造する場合は、最小ロット以上での発注が必要になることが多いです。
黒箔押しとは?活版印刷とのちがい
黒箔押しとは、黒色の転写箔(顔料箔)を加熱した版を用いて素材に押し付け、箔を熱で定着させる加工技術です。この加工は、インクを使用する活版印刷とは異なる表現の次元を持ち、製品デザインにおいて独自の役割を果たします。
黒箔押しとは、熱に反応する黒色の転写箔(主に顔料箔)を使用する加工技術です。
【黒箔押しの手順】
1.黒色インク層がついた箔フィルムを、転写したい素材(紙など)の上にセット
2.デザインを彫刻した「版(はん)」を高温に熱する
3.高温の版を、箔フィルムの上から強く素材に押し付ける
4.熱と圧力により箔フィルムから黒色の層だけが素材表面に定着する
この一連の工程で「黒の膜」が素材に転写されます。
黒箔押しと活版印刷の比較
| 加工法 | 特徴 | 質感と立体感 | 輪郭 |
| 黒箔押し | 箔の膜が転写され、光沢やマットな質感を持つ「漆黒」。金属箔のような強い光沢も可能。 | 熱と圧力で凹凸(立体感)を形成。鏡面やマットなど光沢をコントロール可能。 | 非常にシャープで均一。 |
| 活版印刷(黒) | インクが紙に染み込み、紙の繊維や質感の影響を受ける「墨色*1」。 | 凹みは出るが、箔押しほどの光沢や均一な「膜」は形成されず、インクのテクスチャが残る。 | インクが紙に滲むため、箔押しに比べると輪郭が僅かにぼやける。 |
黒箔押しと活版印刷(黒)は、目指す表現に応じて使い分けましょう。均一で深い漆黒の光沢、シャープな輪郭、立体感を重視する際は黒箔押しが適しています。一方、紙にインクを染み込ませた墨のテクスチャや風合いを活かしたい場合は活版印刷が適切でしょう。
*1 灰色がかった色味。黒の中にわずかに明るさや白味をもった柔らかな黒色
黒箔の具体的な活用事例
黒箔は、その高い意匠性と機能性から、幅広い分野で採用されています。
・高級名刺・ブランドカード
マットな黒箔は、上質な紙の質感と相まってシックで重厚な印象を与えます。光沢黒箔は、文字やロゴに鏡面のような輝きを与え、受け手に強い印象を残します。
・書籍のタイトル・装丁
光沢黒箔は、書籍のタイトル部分に奥行きと高級感を与えます。エンボス加工などと組み合わせることで、黒の存在感を最大限に引き出すことができます。
・自動車部品の加飾
自動車のメーターパネルやテールランプなどの部品に、KANMAKIの遮蔽用黒顔料箔が使用されています。これは、高い隠蔽性で光漏れを完全に遮断するという、機能的な役割を担っています。
・家電製品のロゴ
プラスチック用の黒箔は、家電製品の本体(樹脂素材)のロゴや文字に使用され、高い耐久性と擦れに強い特性から、長期間にわたってブランドロゴの品質を維持します。
・パッケージング
酒類や化粧品などのパッケージで、黒箔はブランドのターゲット層に合わせた「高級感」「神秘性」「モダンさ」といったイメージを的確に伝える役割を果たします。
KANMAKIのよくある質問

ご注文前後によせられるご質問をまとめました。
Q1.最小ロットを教えてください
W640cm×120mのロール2本+試作品を最小ロットとしております。(最低発注金額を100,000円とさせていただいており、その金額で製造できるロットです。)
最小ロットで3cm×3cmのロゴが2万個程度作れる想定です。
Q2.試作は何回対応していただけますか
2回まで対応しています。どういう材質に箔押しをするのかの事前確認やカラーチップによる色の確認を事前に行い、場合によっては試作段階で複数案を提示することで、早期にお求めの製品になるよう調整しています。
Q3.ブランドカラーなど特色の対応はできますか
カラーチップなどで指定色のすり合わせを行い、対応可能か判断して回答しております。
Q4.印刷会社を別途探す必要がありますか
印刷・加工会社の紹介も可能です。やり取りは直接行っていただくことが多いですが、技術的なフォローも可能です。
また、印刷会社をご指定いただいての対応も承っております。
Q5.どのような物体に箔押しが可能ですか
事前に箔押しをしたい被写体を確認いたしますが、様々な被写体への箔押しが可能です。また、KANMAKIはプラスチックへの箔押しについて、技術的にも強みを持っています。
Q6.箔の見本帳やサンプルはありますか
箔の見本帳は現在準備中です。既存品のカットサンプルは無料(送料実費はご負担)にてご提供しております。
Q7.KANMAKIで黒箔の取り扱いはありますか
関西巻取箔工業(KANMAKI)は、黒箔を含む顔料箔の製造販売に注力しており、黒箔の取り扱いはございます。「艶のある黒、マットな黒、深い黒、淡い黒」などインクでは表現できない多様な質感の黒を実現します。
KANMAKIの強みは、顔料箔(オリジナル箔)で培った色合わせの知見と、素材特性や加工条件に対する深い理解です。お客様の求める最高の装飾を実現するため、自社製品に加え取り扱いのない箔種についても信頼できる他社と連携し、少量から大量ロットまで柔軟に提案・提供させていただきます。
KANMAKI「箔々」でアイデアと出会おう
デザインの付加価値を最大化するには、資材の選定だけでなく信頼できる加工方法と技術を持つパートナー選びが不可欠です。KANMAKIの強みをご紹介します。
・ブランドカラーを正確に表現する「オリジナル箔の製造」
箔の見本帳にないオリジナルカラーを製造できます。熟練の色合わせ技術で、ブランドカラーを正確に再現し、濃淡、ツヤ・マット、パールなど唯一のカラー表現が可能です。
・高い技術力による「複雑なデザインへの確実な転写」
日本初*6の転写箔を開発した技術力と経験値があります。「色付け箇所が複雑で綺麗に色が転写できない」との課題にも対応。自動車メーターや化粧品ロゴなど、難しい被転写体へも確実な表現を実現します。
・高い耐久性が製品価値を守る「工業用途にも耐える信頼性」
自動車部品の対応実績もあり、擦れや褪色に強い高耐久性を実現しています。1/1000mmレベルの均一で安定した塗膜や、エンブレムやテールランプなど光漏れを完全遮断する高い隠蔽性が必要な用途にも対応。過酷な環境下でもデザインを維持します。
・企画段階から最終納品まで「安心のサポート体制」
- 専門の技術士が採用ニーズを入念にヒアリングします
- お客様の求める表現を探索するため複数回の試作を実施します
- 納品物のズレを解消し、ご納得いただいた上で製造を開始します
*6 参照:企業概要|KANMAKI(関西巻取箔工業)

「活版印刷とは違う、究極の漆黒表現を追求したい」「耐久性に優れた黒のロゴを実現したい」といった課題をお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。貴社の目指すブランドイメージを深く理解し、実現性の高い・最良の表現を共に追求してまいります。
【お問い合わせ】
箔の加工に関するご相談や箔サンプル請求など、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。

